派遣社員や契約社員、パート、アルバイトといった非正規社員の割合は年々増加傾向にあり、現在では4割近くと非常に高い数値になっています。
そしてそのうちの2割程度の人は、本来は正社員になりたいと考えているが正社員として働ける会社がなかったという「不本意非正規」であり、このことは社会的な問題となっています。
非正規社員として働く場合の一つの問題は、期間の定められた有期雇用であるということ。派遣社員なら最大3年、契約社員なら最大5年という縛りがあり、将来に不安を感じている人は少なくないでしょう。
その不安を取り除く為には、たとえ難易度が高いとしてもなんとかして正社員として働くことができる仕事を見つけるしかありません。
今回は派遣社員の3年ルールや契約社員の5年ルールの概要、そして正社員になる為の方法について紹介していきましょう。
派遣社員の3年ルール、契約社員の5年ルール
まずは派遣社員の3年ルール、契約社員の5年ルールについて紹介していきましょう。
正社員は無期雇用、派遣社員や契約社員は有期雇用
正社員として働く場合、雇用に関して期間の定めはなく、大きな問題がない、もしくは自ら退職することがない限りは定年まで働くことになります。
正社員をクビにすることはそう簡単にできるものではなく、それ相応の理由があり、改善の努力をしてもどうしようもない場合に限られます。
一方で派遣社員や契約社員といった非正規社員は期間の定めがある有期雇用であり、雇用形態によって働くことができる最大年数が定められています。
簡単に辞めさせることができない正社員と違い、契約した期間が終われば辞めさせることができる非正規社員は企業にとって需要の増減に対応する為に非常に便利なものとなっています。
派遣社員の3年ルール
派遣社員の場合、労働者派遣法によって同一の組織で働くことができる期間は3年が限度と定められています。
ただあくまで組織なので同じ会社であっても、課が異なれば働くことは可能です。
とは言え、3年という区切りで一度仕事がなくなるということには変わりなく、少なくとも課は変わるので仕事内容も変わり、せっかく慣れてきたことから離れなくてはなりません。
以前までは特定の専門業務を行っている人に関しては上限がなかったのですが、2015年の改正によってそういった人達のも3年という上限が設けられました。
この上限を設けている理由は、正社員としての雇用に切り替えることを促すことです。
上限がなければずっと派遣社員として雇い続けますが、上限を設けることによって正社員に切り替えるタイミングを作っているというわけです。
ただ、企業は3年が過ぎても違う派遣社員であれば同じ組織で雇うことができる為、結局は正社員にするのではなく次々に人を入れ替えるということになることが考えられます。
参考:厚生労働省「平成27年派遣法改正」
契約社員の5年ルール
契約社員の場合、労働契約法によって「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換することになる」ということが定められています。
契約社員として5年以上働くこと自体が禁じられているのではなく、5年以上になると労働者の一存で無期雇用に切り替えることが可能になるというものです。
有期雇用であることにメリットを感じている企業は、労働者の一存によって無期雇用にもなれる状態にするようなことはまずない為、契約の期間を5年までとし、それ以上は雇用を継続しないという形にとります。
それ故に結局働くことができる期間は5年が上限となってしまうというわけです。
最大年数まで働けるとは限らない
派遣社員にしろ契約社員にしろ、3年や5年というのはあくまで上限であって、働きだしたらその年数は働くことができるということを保証するものではありません。
通常は3ヶ月、6ヶ月、1年というように短い契約期間を定められ、その期間が終わる度に契約を更新していくという形になります。
もし企業側が契約を更新しないと言えばそれまでで、それ以上働き続けることはできなくなってしまいます。
元々有期雇用は需要の増減に対応する為に雇用されている場合が多い為、上限まで働くことができるだろうと思っていても突然契約を更新してもらえなくなるということも珍しいことではありません。
有期雇用であることのデメリット
無期雇用に比べて、有期雇用であることには様々なデメリットがあります。
必ず仕事がなくなるタイミングがある
有期雇用である以上、働くことができる期間にも上限があり、必ず仕事がなくなるタイミングがあります。
派遣社員の場合だとすぐに違う仕事を紹介して貰うことができる可能性もありますが、それは確実に保証されているものではなく、紹介して貰えない、1ヶ月くらい待たされて無給期間が発生するといった場合も多々あります。
契約社員の場合には誰かが次の仕事を紹介してくれるなんてこともなく、自ら転職活動を行い、また次の仕事を見つける必要があります。
給料が上がらない
一つの会社に居続けることができず、様々な仕事を転々とすることになってしまう為、給料はなかなかあがりません。
もちろん中には非正規社員であっても高いスキルを身につけ年収アップしていく人もいないわけではありませんが、それはごくわずかの人間でほとんどの人はずっと変わらない給料でいつまでたっても年収300万円程度で居続けます。
実際、厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、正社員の平均賃金は20代前半で20万8千円であるものが50代前半で40万1千円と大きく増えますが、非正規社員の場合では20代前半で18万2千円であるものが50代前半で20万9千円とほぼ変わらないという結果になっています。
一つの職場、一つの仕事を続けることができない
一つの職場で一つの仕事を続けることができないというのは、給料や安定性といった部分以外にもデメリットを生じます。
次から次へと新たな環境で新たな人間関係を築いていかなくてはいけないという大変さ、一つの仕事を続けることによって得られる仕事への理解度が低くなってしまう、同じ職場だからこそできる長期的な視線で成長を期待した業務を与えることができないといったことなどが挙げらえます。
派遣社員や契約社員から正社員になる為の方法
これだけデメリットがある非正規社員ですから、やはり正社員を目指した方が良いでしょう。
女性の場合には、いずれは専業主婦になるつもり、仕事量を減らすつもりと考える人もいるかもしれませんが、正社員として働いているほうが育休、産休等の福利厚生も充実していますし、辞めたくなればいつでも辞めることは可能です。
フルタイムで働く限りは正社員を目指さない理由はないと思います。
派遣社員から派遣先の会社に直接雇用される
派遣社員の場合、派遣された会社に直接雇用される場合もないわけではありません。
企業側にどうしてもその人がいいと思わせる働きぶりができれば、3年という上限を超えた時に正社員に切り替えてくれるという可能性もでてきます。
ただその可能性はごくごく低頻度。
ほとんどの会社はそもそも直接雇用しようなんてことを少しも考えていない場合がほとんどですし、有期雇用から無期雇用に切り替えることのリスクやデメリットを超えるくらいの働きぶりを示すことができるというのは相当確率が低いことです。
実際、厚生労働省が調査した派遣社員から正社員にする制度の実態は以下の通りとなっており、決して期待できるものではない数字になっています。
派遣社員を正社員に採用する制度はあり、実績もある | 1.7% |
派遣社員を正社員に採用する制度はあるが、実績はない | 11.3% |
派遣社員を正社員に採用する制度はないが、実績はある | 1.3% |
派遣社員を正社員に採用する制度はなく、実績はない | 80.8% |
不明 | 4.1% |
制度がある会社は13%あるものの、そのうちのほとんどでその制度は利用されたことがないし、制度がなくても実績がある会社はあるものの、実績がある会社自体が併合わせて3%しかないという結果になっています。
実績がある会社でも、派遣社員から正社員になることができた人なんてほんのごく一部であることを考えると、派遣社員から正社員に直接雇用されるなんてことは期待できるものではありません。
また、運よく直接雇用されたとしても正社員ではなく契約社員での採用であるというのはよくある話。結局有期雇用として働くしかできなかったという事態になりかねません。
契約社員から正社員登用される
契約社員の場合、上司から声をかけられる、もしくは試験を受けて正社員登用されるという場合もあります。
こちらも派遣社員同様、新しい契約社員を雇うよりもその人を雇い続けたいと思わせることができれば可能性はあるでしょう。
ただこちらも同様にかなりの低頻度。
厚生労働省の「正社員登用制度の導入状況」によると、派遣社員よりは可能性はあるものの5年を費やして目指すにはかなりリスクのある行為であると感じます。
正社員登用制度はあり、実績もある程度ある | 24.3% |
正社員登用制度はあるが、実績は少ない | 14.5% |
正社員登用制度はあるが、実績はない | 7.4% |
正社員登用制度はあるが、実績は不明 | 0.3% |
正社員登用制度はない | 50.4% |
不明 | 3.1% |
紹介予定派遣の利用
直接雇用を前提をした紹介予定派遣制度は、通常の派遣社員に比べて正社員になることが非常に高くなっているとともに期間の上限が6ヶ月となっている為、時間のロスが少ないという利点があります。
紹介予定派遣から直接雇用される可能性は、厚生労働省「平成25年度労働者派遣事業報告書の集計結果」によると54%となっており、通常の派遣社員に比べて抜群に高いです。
ただし直接雇用される人の3割は契約社員としてである為、正社員になれる可能性は38%程度となります。
これだけ恵まれている紹介予定派遣はそもそも採用されることが難しく、通常の転職活動同様に採用試験が行われ誰もが働くことができるとは限りません。
転職活動を行い正社員になる
派遣社員や契約社員から正社員になる場合に、最も可能性が高く、手っ取り早く正社員になることができるのが通常の転職活動を経て正社員になるという手段です。
非正規社員として働いている人が正社員になることは難しいと言われていますが、近年の人手不足が顕著で売り手市場となっている状態では十分に転職することが可能となっています。
とは言え、それまで正社員として働いてきた人に比べれば難易度があがるというのは確かです。
派遣社員や契約社員として働いている場合、実績が少なくスキルも身に付きにくい、正社員として働いていた人にくらべて不安といった理由から、どうしても不利になっていしまう可能性があります。
ただ、そのことを考慮しても他の手段に比べると可能性は高いと言えるでしょう。実際、派遣社員から正社員になった人は自ら転職活動を行いなった人がほとんどです。
正社員への転職を成功させるポイント
派遣社員や契約社員から正社員になるというのは確かに簡単なことではありません。
ただ決して不可能なことではなく、成功のポイントを押さえ粘り強く転職活動を行えば、いつかは正社員に転職することができるはずです。
履歴書に書く志望動機や自己PR
非正規社員にとって最大の難関が書類選考です。
単純に職歴を見て落とす企業もありますが、職歴を気にしない企業を受けた場合であっても正社員の人に比べて実績として書くことができなかったり、志望動機もあいまいなものになってしまいがちになってしまい結局通過できずに終わってしまう場合も非常に多くなっています。
一度しっかり自己分析、スキルの棚卸をした上でじっくり考え、できれば転職エージェントにも相談して履歴書の質をとにかく高めるように心がけてください。
年齢
派遣社員や契約社員から正社員を目指そうと思った場合、年齢はかなり重要になってきます。
20代なら十分に可能、30代になるとかなり厳しく、40代ともなると相当厳しくなってしまいます。
だからこそ、直接雇用や正社員登用に淡い期待をもって時間を浪費することには多大なリスクがあるです。
正社員になりたいならとにかく早く行動すること。後で、もう少ししたらなんてことは絶対に考えないでください。
現状をよく理解し、ハードルを高くしすぎない
正社員を目指した転職をする際に、こだわりを持って希望の条件を考えることは大切なことですが、それは少なくとも現実をよく理解した上で考えたものでなくてはなりません。
極端なことを言えば、これまで一度も正社員として働いたことがないという人が年収600万円、700万円以上の年収の仕事を見つけようなんてことはほぼ不可能なことですし、そこそこの企業で人気のある職種(企画や研究)といった職種も経験者であることが条件となっている為ほぼ不可能です。
不可能なことばかりを理想として掲げたって仕方がありません。まず第一の目的は正社員になること。正社員になってある程度働いたからこそ道も開けてきます。
転職エージェントの利用
転職エージェントで扱っている求人はレベルが高く、利用できるのはこれまで正社員として働てきた人、経験者採用に挑む人というイメージを持っている人がいるかもしれません。
確かに、派遣社員や契約社員として働いていた人が登録したら紹介できる企業がないと断られたということもよく聞きます。
ただ、使ってはいけないわけでもなければ、職歴関係なくサポートしてくれる転職エージェントもあります。
転職活動を進めるにあたり、転職エージェントを利用しているかしていないかで成功率は大きく変わってきます。
だからこそ、自分が利用できる転職エージェント会社を見つける為に複数の転職エージェントに登録してみてください。